ふんふん古事記32 国譲りへの道1
天迦久神(あめのかくのかみ)を遣わせて、伊津之尾羽張神(いつのおはばりのかみ)とその子、建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)に、大国主命のところに行くか行かないかを聞きに生かせることになった。天迦久神が、伊津之尾羽張神に尋ねると
「恐れ多いことですからお引き受けしましょう」しかし今回の仕事は、私の子、剣の神である建御雷之男神が適任なので彼にさせましょう」と答え、わが子を差し出しました。
建御雷之男神に、船の神である天鳥船神(あめのとりふねのかみ)を添えて葦原中国へと旅立たせたのです。この二柱の神は高天原から下ったところ、出雲の国の伊那佐の浜に着きました。建御雷之男神が長さ十握みもある十?剣を引き抜くと、波の穂に、この剣を逆さまに柄のほうを下にして差し立てました。そして剣の切先の上に足を組んで座り、大国主神に尋ねました。
「我々は、天照大御神と高御産巣日神の命により次のことを問うためにやってきた。汝が今、国の主として領有しているこの葦原中国は、我が御子の治めるべき国であると申されて、その役目を御子にゆだねられた。汝の考えはいかがであるか?」
そこで大国主神はこう答えられました。
「私は年老いてもはや自らが答えられない。私の子の八重言代主神(やえことしろぬしのかみ)が答えましょう。しかし、彼は今鳥を狩り、魚を釣りに御大(みほ)之崎(美保の岬)へ出かけております」
そこで、天鳥船神を遣わせて八重言代主神を呼び、尋ねてみました。八重言代主神は父である大国主神にこういいました。
「恐れ多いことです。それならば、この国は、天神(あまつかみ)の御子に奉りましょう」
八重言代主神は乗ってきた船を踏んで傾け、天の逆手という特殊な柏手(かしわで)を打って、船を青柴垣に変えて、その中に隠れてしまいました。
さあ、いよいよ国譲りが実現するのでは? と思うのは、まだ早いのです。まだまだこれから厄介なことが起こってくるのです。