ふんふん古事記33 国譲りへの道2
高天原から来た使いの神は、大国主神に尋ねた。「汝の子八重事代主神(ヤエコトシロヌシノカミ)は、国を天神(アマツカミ)の御子(ミコ)に差し上げたいと答えた。この他にも相談してみる子があるか?」
「もう一人、私の子がいます。建御名方神(タケミナカタノカミ)がおります」と答えたかと思うと、そこに現れたのは大岩を軽々と差し上げた力持ちの建御名方神でした。
「何者だ。我が国に来て、こそこそ話している奴は? 我が国を取りに来たのなら 、わしと力比べをしようじゃないか。わしがお前の手をつかんでやる」
そこで、建御雷神の手をつかむと、その手は一瞬にして氷柱に変わり、それは剣の刃となり、建御名方神に向けられた。
「今度はわしの番じゃな?」というと、建御雷神が建御名方神の手をつかむと、まるで葦の若い茎でも手にしたようにぐいっとつかむと投げ飛ばしてしまった。
さすが力持ちの建御名方神も、かなのわずと見て逃げ出した。建御雷神は、後を追いかけついに、のちの信濃である科野の国、のちの諏訪湖である洲羽の海まで追い詰めて、今まさに殺さんとした。
建御名方神は、こういった。
「命だけは助けてください。この土地以外の所には決して参りません。そして父の大国主神、兄の八重事代主神の言うとおりにします。この葦原中国は、天神の御子のおおせられるままにさし上げましょう」
そこで大国主神も「子ども二人の申しましたとおり、私も決して背くことはありません。只一つ、地盤に深く宮柱を高く立てて、壮大な宮殿を作り、高天原に届くほどに千木を高く立てた、宮殿に私が住み、祭られることをお許しください。それが許されるのなら、出雲の国に隠れてとどまることにいたしましょう。また、それ以外の子ども百八十神(モモヤソガミ)には、八重事代主神が先頭に立ち神々を統率します。それに背く神は居りますまい」
こう申し上げると、大国主神は出雲国の海岸近くに立派な宮殿をお作りになり、水戸神の孫の櫛矢玉神(クシヤタマノカミ)が料理をして服従の徴(しるし)として天の御饗(アメノアエ)を天つ神に献上しました。
建御雷神は、高天原に帰り、葦原中国を平定した様子を報告しました。これが出雲の国譲り神話です。