童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

季刊絵本新聞「絵本とことば」よりほんの千夜一夜

2022.8.3ほんの千夜一夜

『深夜特急(1~6)合本版』 沢木耕太郎著(新潮文庫【増補新版】・2020年)


今まで言語や子どもの発達の書籍を紹介してきましたが、今回は趣向を変えて夏休みに読んでもらいたい本を紹介します。
沢木耕太郎氏の『深夜特急』という本で、1970年代にインドのデリーからイギリスのロンドンまで乗合いバスで行けるかを試した旅の話です。
成田から香港を経由したのち、実際の旅の出発点はマカオなのですが、たまたま自分のマカオへの旅行の道中にこの1巻目を読んでいたので、その内容を実体験するような感覚を抱きました。
6巻にわたるこの書籍は、旅で出会う人々とのふれあいや街の様子が描かれています。中に登場する街に行った後で、もう一度読み返すこともこの本の楽しみ方のひとつなのですが、私もイスタンブールを訪れてから読み返してみて、沢木氏がこの街をどう見たのかが改めてわかり、大いに納得したのでした。

加藤映子 大坂女学院大学・短期大学 学長
大阪女学院短期大学卒業後、大阪YMCA勤務を経て、ボストン大学・ハーバード大学教育学大学院に学ぶ。ハーバード大学で教育学修士・教育学博士を取得。専門分野は言語習得・言語と文化・コンピュータを利用した教育。絵本読み聞かせ場面における母子のやりとりなど、「子どもとことば」を現在の研究課題としている。