童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

ダークおじさんと童謡の世界

2017.4.20ダークおじさん

「春の小川」に3番があった!?~春の小川はさらさら流る?~



一、春の小川はさらさら流る
  岸のすみれやれんげの花に
  匂いめでたく 色うつくしく
  咲けよ咲けよと ささやく如く

二、春の小川はさらさら流る
  蝦やめだかや小鮒の群に
  今日も一日ひなたに出でて
  遊べ遊べと ささやく如く

三、春の小川はさらさら流る
  歌の上手よ いとしき子ども
  声をそろえて小川の歌を
  歌え歌えと ささやく如く
        (※著作権消滅済)

この詞は、1912年(大正元年)『尋常小学唱歌 第四学年用』で、文語体で書かれています。
しかし、私たちが習ったのは、「さらさら行くよ」であり、「咲いているねと ささやきながら」です。これは、1942年(昭和17年)『初等科音楽一 三年生用』の教科書で、歌詞が口語体に変わったためだそうです。「国民学校令施行規則」では、国語で文語文を教えるのは5年生以上と定められていて、当時の文部省国民学校教科書芸能科編纂委員であった林 柳波(はやし・りゅうは)氏が、歌詞を口語体に変え、同時に3番の歌詞を削除したそうです。

確かに、童謡・唱歌の会でも、「♪さらさら行くよー」とずっと口語体の歌詞で歌っていましたが、上記の文語体の歌詞の存在と3番の詞の存在を知って以来、上記の詞で歌っています。

 ♪春の小川はさらさら流る
  歌の上手よ いとしき子ども
  声をそろえて小川の歌を
  歌え歌えと ささやく如く
いとしきとは、「愛しい」の文語体「可愛い」と思う気持ちです。子ども自らが「愛しき子ども」と歌いうのはどうかと林柳波氏は考えたのかもしれません。そして、小学3年生には3番までは長くて必要ないと判断したのかもしれません。

高野辰之作詞 岡野貞一作曲の文部省唱歌「春の小川」「朧月夜」「故郷」は、100年以上も歌い継がれています。これからも歌い続けたい曲です。

(写真は、大阪市東部を流れる平野川のコンクリートの土手に描かれた子どもたちの絵)

文/ダークおじさん 筒井幹夫(65)
学生時代は、グリークラブ(男声合唱団)に所属。卒業後、青少年育成専門団体に携わり、学校キャンプ、ファミリーキャンプを担当する。ここで、歌が大きな力になることを体験する。
現在、ふんふんさろんシニアスタッフ。大阪童謡くらぶ会員、歌声喫茶ピープルズリーダー。