寺山修司さんの童謡集
寺山修司さんの童謡集
寺山修司編著『日本童謡集』(1972年出版 1995年「名著復刻」と題して再刊)を以前に買っていたのを思い出して、書棚から取り出して「まえがき」を読んでいます。(寺山修司:日本の歌人、劇作家。演劇実験室「天井桟敷」主宰。カルメン・マキが歌った「時には母のない子のように」の作詞者でもある。)
童謡集でありながら、副題は“「青い眼の人形」から「唐獅子牡丹」まで”とあって、「唐獅子牡丹」のほか、「網走番外地」「錆びたナイフ」「酒は涙か溜息か」などの歌謡曲の類い、また戦後ラジオドラマの主題歌「笛吹童子」「赤胴鈴之助」なども選曲されています。もちろん「青い目の人形」「赤い靴」「たきび」「ゆりかご」「月の砂漠」など、本来の童謡といわれている曲も楽譜と一緒に歌詞が掲載されています。
なぜ、戦前戦中戦後の歌謡曲も「童謡」?
寺山さんは「すぐれた『童謡』というものは、長い人生に二度あらわれる。一度目は子供時代の歌として、二度目は大人になってからの歌としてである。」と記しています。また、「童謡の価値は、子供時代に歌われた頻度によってきまるのでなく、大人になってから思い出された頻度によって決まる」とも。
確かに、私自身、親や祖母が歌ってくれた子守歌、幼稚園で習った歌、甥や姪とふれた童謡、あるいは子どもの頃によく耳にしたラジオやテレビから流れていた歌謡曲などに、いま再び出会い、あの頃に引き戻されて、あの時代の幼友達や風景を懐かしく思い出すことがあります。だから、寺山さんはこれらの曲も大きく「童謡」に括ってもいいだろうということなのでしょうね。
「童謡」を歌うと心の浄化作用にもなる?
童謡伝道師としてダークおじさんも、さまざまなところで「うたごえの会」を開いていますが、純粋な童謡だけでなく、戦前前後の昭和歌謡、時には戦時中の外地の兵隊さんを励ました歌なども取り上げています。リクエストもこれらの曲が多いのです。
今年も12月は多くの「クリスマスソング」を歌いました。「ジングルベル」や「きよしこの夜」を歌うと、子どもの頃、住まいが商店街の中にあったので、歳末大売り出しの女性の声のバックにクリスマスソングが流れていたことを昨日のように思い出します。25日が過ぎると、♪もういくつ寝るとお正月~「お正月」が流れていました。あの時代の商店街はどこも押すな押すなの人込みでした。
最近「歌の力」という言葉をよく耳にしますが、「童謡」は広い意味で、カタルシス-こころの浄化作用があるのだと思います。子どもの時には理解し得なかった歌詞が、今なら解ることがあります。齢を重ねてきた証拠です。
2018年は童謡という言葉が生まれちょうど100年です。新しい年も童謡を歌い続けたいと思います。