童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2017.4.4今夜のお話なあに

おむすびころりん

 昔、ある所に、正直者のお爺さんと優しいお婆さんが住んでいました。
 ある日、お爺さんは、お婆さんが作ってくれたおむすびを持って、畑仕事に出掛けました。
 昼になって、お弁当を食べようとすると、おむすびが転がりました。
    
 おむすびころりん、すっとんとん。
 お爺さんは追いかけました。
「待て待ておむすび、待ってくれ。」
 おむすびころりん、すっとんとん。
「待て待ておむすび、待ってくれ。」
 ころころころりん、すっとんとーん。
 おむすびは穴の中に落ちてしまいました。
おむすびころりん、すっとんとん。
「待て待ておむすび、待ってくれ。」
 ころころころりん、すっとんとーん。
「わぁっ。」
 お爺さんも穴の中に落ちてしまいました。
 そこは鼠の国でした。
「お爺さん、おむすびをありがとう。お礼に歌います。踊ります。」
「ぺったん餅つき、この世は天国。猫さえいなけりゃ、極楽! 極楽!」
 お爺さんは時の経つのも忘れて楽しみました。お爺さんが帰ろうとすると、
「お土産にこのしゃもじをどうぞ。お釜に水をちょっと入れて、お米を三粒入れこのしゃもじでぐるぐるかき回すと、不思議なことが起こります。」
 家に戻ったお爺さんは、釜に水を入れて、米を三粒入れぐるぐるかき回すと、なんとご飯がいっぱいになりました。
 それを隣の欲張り爺さんが見ていました。
「あれがあったら、楽に暮らせる。あのしゃもじを手に入れてやろう。」
 そこで正直なお爺さんに訳を教えてもらいました。
 欲張り爺さんも山で昼ご飯。おむすびをわざと転がしました。
 おむすびころりん、すっとんとん。
「待て待ておむすび、待ってくれ。」
 おむすびは穴の中に落ちてしまいました。
 お爺さんも穴の中に落ちました。
「お爺さんようこそ。おむすびをありがとう。お礼に歌います。踊ります。」
「鼠たちは猫が苦手じゃから、猫の真似をしてやろう。大騒ぎをしている間に、しゃもじをどっさりいただいていこう。」
 欲張り爺さんは「にゃーお!」と叫びました。
 がらがら、どっしーん。
 穴が天井から崩れて欲張り爺さんは土や石の下敷きになり、穴の中に埋められてしまいました。
 そしてそれからずっと土の中。
 とうとうもぐらになってしまいました。
 正直なお爺さんとお婆さんは、しゃもじをいつまでも大切にして、幸せに暮らしましたとさ。
(もり・けん)

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。