童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2021.1.1今夜のお話なあに

たべものだいすきおうさまシリーズ③1いち2に3さん

 昔、ある国に食べることが何より好きな王様がいました。
 王様は、ある日、もっと珍しい食べ物はないかと、考えました。
 ある日、王様はおやつパーティーを開こうと、こんなお触れを出しました。
「きょう、おやつパーティーを開きます。
自分の好きな食べ物を持ってくること」
1 「さて、私は何を持っていこうかな?」
王様は考えました。
「そうだ! イチゴを一つ、持っていこう」
2 お城の二人の庭師は、肉まんを持ってきました。
3 三人の皿洗いは、サンドイッチを作って持ってきました。
4 四人の洋服屋は、羊羹を持ってやってきました。
5 五人の豪傑は、五目飯を持ってやってきました。
「さて、私たちは何を持っていこうか」
 お城の中は、がやがや、わいわい、大騒ぎ。
「早くきめなきゃ」
「パーティーが始まっちゃう」
6 六人の牢屋番は、ロールパンを持ってきました。
7 七人の王女様は、バナナを持ってきました。
8 八人の機織は、ハンバーガーを持ってきました。
9 九人の給仕が、女王様のクッキーを運んできました。
10 十人の家来が、ジュースをチョプチョプ運んできました。

 さあ、御馳走がいっぱいです。
「何と何が、いったいいくつ集まったかな?」
 みんな嬉しそうに数えました。

王様は、イチゴを一つ、庭師が、肉まんを二つ
皿洗いが、サンドイッチを三つ、洋服屋が、羊羹を四つ
豪傑が、五目飯を五つ、牢屋番が、ロールパンを六つ
王女様は、バナナを七つ、機織は、ハンバーガーを八つ
女王様は、クッキーを九つ、家来たちは、ジュースを十本

 ちょうどその時、森に住む、いたずら魔女が、ホーキに乗って通りかかりました。
「まあ、私だけ呼ばなかったね。ようし!」

 大広間のテーブルにはたくさんの食べ物がいっぱい並びました。皆さんは、いくつあるかわかりますよね。
 イチゴは一つでしたね。バナナは七つでしたね。クッキーは? わかりますね?
「いただきまーす」
 この瞬間に、いたずら魔女が魔法を使いました。
 真っ暗になって、次に明かりがついたときには、食べ物は消えてお皿とお箸しかありません。

 皆さんは、いくつあったかわかりますよね。
 イチゴが一つ、肉まんが二つ、サンドイッチが三つ……でしたね。
「わしのイチゴはどこじゃ?」
 王様も探します。
「ごもくめし、やーい」
 お城の中をみんなで食べ物探しが始まりました。
 いたずら魔女は、みんなの食べ物をお城の外に飾りにしました。中にいるものにはわかりません。
 何がいくつあったか、皆さんはわかりますね。

* 私が私が今から37年前、32歳の時に作った絵本。当時、私はひかりのくにの編集部に居ました。残念ながら、もう絶版になっていますが、私の宝物のお話です。
この「たべものだいすき王様シリーズ」は3個出ていて、①あいうえお、②1,2,3、③まる〇さんかく△しかく□と続きました。
アマゾンや古本屋さんで手に入るかもわかりませんね。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。