鬼は心の中に住んでいる
昔々、1月から2月にかけて、京都の北山のあたりはとても寒く、雪がよくちらついて寒いところでした。
ここに住んでいたおじいさんとおばあさんの家の屋根にも雪がたくさん積もっておりました。とても寒いこの冬を越すためには、毎日、囲炉裏の火は絶やすことはありません。囲炉裏の火は部屋の中をぽかぽか春のようにしてくれました。
ある日のことです。おじいさんは火を起こすのがめんどうくさくて火を燃やすのがいやになりました。
「毎日、火を燃やすのはいやだ。いやだ。あーいやだ」
とうとう、おじいさんは火を燃やすのをやめてしまおうと思いました。
ある雪の日、おじいさんは火を燃やしませんでした。すると、部屋の温度がどんどん下がり、部屋の中はどんどん寒くなっていきました。
おじいさんは、着物を何枚も重ねていきました。それは、だるまさんのような恰好でした。
おばあさんは、寒くて寒くて、こんこんと咳が出て、体がぶるぶる震えだしました。おじいさんが火を燃やさなかったので、おばあさんは風邪をひいたみたいです。
「すまないなあ、おばあさんや。わしが昨日、火を燃やさなかったから、おばあさんに風邪をひかせてしまったんじゃ」
「おじいさん、そんなことはありませんよ。おじいさんが、昨日、火を燃やすのが、いやになったのはね・・・おじいさんの心に中にいる、いやいや鬼がでてきたのですよ」
おばあさんは続けていいました。
「おじいさんは、悪くありません。鬼さんは、みんなの心の中にいるのですから。おじいさんの心の中にいた、いやいや鬼がそうさせたのですよ」
鬼は、苦しみや、悲しみなど、大人の心の中にも、子どもの心の中にも住んでいます。それをわかりやすい形にしたものが、節分の鬼なのです。
おこりんぼ鬼、泣き虫鬼、いじわる鬼、けんか鬼など、大人にも子どもにも、鬼はいますね。
節分の時期にこのことを知っていれば、何かの役立つのではと思い、紹介しました。