童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2020.2.1今夜のお話なあに

鬼は心の中に住んでいる

 昔々、1月から2月にかけて、京都の北山のあたりはとても寒く、雪がよくちらついて寒いところでした。

 ここに住んでいたおじいさんとおばあさんの家の屋根にも雪がたくさん積もっておりました。とても寒いこの冬を越すためには、毎日、囲炉裏の火は絶やすことはありません。囲炉裏の火は部屋の中をぽかぽか春のようにしてくれました。

 ある日のことです。おじいさんは火を起こすのがめんどうくさくて火を燃やすのがいやになりました。

「毎日、火を燃やすのはいやだ。いやだ。あーいやだ」
 
とうとう、おじいさんは火を燃やすのをやめてしまおうと思いました。

ある雪の日、おじいさんは火を燃やしませんでした。すると、部屋の温度がどんどん下がり、部屋の中はどんどん寒くなっていきました。

 おじいさんは、着物を何枚も重ねていきました。それは、だるまさんのような恰好でした。

 おばあさんは、寒くて寒くて、こんこんと咳が出て、体がぶるぶる震えだしました。おじいさんが火を燃やさなかったので、おばあさんは風邪をひいたみたいです。

「すまないなあ、おばあさんや。わしが昨日、火を燃やさなかったから、おばあさんに風邪をひかせてしまったんじゃ」

「おじいさん、そんなことはありませんよ。おじいさんが、昨日、火を燃やすのが、いやになったのはね・・・おじいさんの心に中にいる、いやいや鬼がでてきたのですよ」

 おばあさんは続けていいました。

「おじいさんは、悪くありません。鬼さんは、みんなの心の中にいるのですから。おじいさんの心の中にいた、いやいや鬼がそうさせたのですよ」

 鬼は、苦しみや、悲しみなど、大人の心の中にも、子どもの心の中にも住んでいます。それをわかりやすい形にしたものが、節分の鬼なのです。

 おこりんぼ鬼、泣き虫鬼、いじわる鬼、けんか鬼など、大人にも子どもにも、鬼はいますね。
 節分の時期にこのことを知っていれば、何かの役立つのではと思い、紹介しました。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。