童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2018.4.8今夜のお話なあに

大きな蕪

 お爺さんが蕪の種を播きました。
「甘い甘い、蕪になあれ。大きな、大きな、蕪になあれ」
 蕪はどんどん大きくなりました。
 お爺さんは、蕪を抜くことにしました。
「うんとこ、どっこい。うんとこ、どっこい」
 蕪は抜けません。
「おーい、お婆さん。ちょっと手伝っておくれ」
 お婆さんはお爺さんを、お爺さんは蕪を引っ張ります。
「うんとこ、どっこい。うんとこ、どっこい」
 蕪は抜けません。
「クララや。ちょっと手伝っておくれ」
 孫娘はお婆さんを、お婆さんはお爺さんを、お爺さんは蕪を引っ張ります。
「うんとこ、どっこい。うんとこ、どっこい」
 蕪は抜けません。
 孫娘は犬を呼びました。
 犬は、孫娘を、孫娘はお婆さんを、お婆さんはお爺さんを、お爺さんは蕪を引っ張ります。
「うんとこ、どっこい。うんとこ、どっこい」
 蕪は抜けません。
 犬は、猫を呼びました。
 猫は犬を、犬は、孫娘を、孫娘はお婆さんを、お婆さんはお爺さんを、お爺さんは蕪を引っ張ります。
「うんとこ、どっこい。うんとこ、どっこい」
 蕪は抜けません。
 猫は、鼠を呼びました。
 鼠は猫を、猫は犬を、犬は、孫娘を、孫娘はお婆さんを、お婆さんはお爺さんを、お爺さんは蕪を引っ張ります。
「うんとこ、どっこい。うんとこ、どっこい」
 ズズズッポーン!
 やっと蕪は抜けました。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。