かぜのおじさん
むかしむかし、村のお堂の前で子どもたちが遊んでいると、知らないおじさんがやってきて言いました。
「栗や柿、梨や蜜柑がある所へ、行きたいかい?」
子どもたちは、声をそろえて言いました。
「行きたい、行きたい!」
おじさんはお尻から尻尾を出しました。
「みんな尻尾にまたがって、しっかりつかまるんだ」
すると、ゴォーッと生温かい風が吹き、あっという間に栗や柿、梨や蜜柑がいっぱいある所に着きました。
「好きなだけ食べていいよ」
おじさんはビューと生温かい風を起こして、木からたくさんの果物を落として飛んでいきました。子どもたちは、大喜びで食べ始めました。
帰ろうとして子どもたちは、こまってしまいました。
「どうやって帰ったらいいの?」
「ぼくたちの村は、どこ?」
子どもたちは、飛んで来たと思うほうに歩いていきましたが、やがて日が暮れてしまいました。
「家へ帰りたいよう」
とぼとぼ歩くと、向こうに家の明りが見えました。
「家があるよ。わーい、家だ!」
家の中には、おばあさんがいました。
「おや? 子どもたち、どこから来たの?」
「うん、知らないおじさんと風に乗って、栗や柿、梨や蜜柑をたくさん食わしてもらったの。でも、おじさんは僕らを置いて、飛んでいったんです」
「そうかい、その子は、おらの息子の南風だ。私のもう一人の息子の北風に家まで送らせるからな」
「北風よ。子どもたちを、家に連れて行ってやれ」
北風は、南風と同じように、お尻から長い尻尾を出しました。子どもたちがまたがるとゴォーッと冷たい風が吹き、村のお堂まで送ってくれました。
「またおいで!」
というと、北風はゴォーッと冷たい風とともに帰って行きました。