あいうえお雛様
あいうえお雛様
朝一番に、あやちゃんは、お家のお雛様の所に行きました。
「おはようございます。」
「あれ? おかしいな? 変だなあ 今朝のお雛様。」
あやちゃんは、園に行ってもお雛様のことを考えていました。すると、園長先生が、お雛様のお話をしてくださいました。
「一番上がお内裏様たち、雌雛と雄雛っていうの。その下に三人官女ね、それから五人囃子・・・。そしてこの方が右大臣。」
「あっ、そうだ。家のお雛様と、ここが違うわ。」
あやちゃんは心の中でいいました。
「今朝は、たしか右大臣が向かって右にいらしたわ。」
家に帰ったあやちゃんは、お雛様をすぐ見ました。そして右大臣と左大臣が入れ替わっていることに気づきました。
「おかしいな、お母さん、昨日、お雛様動かした?」
「いいや、動かしてないわよ。」
あやちゃんは、その夜、お雛様をそっと見張っていることにしました。
すると、きれいな音楽が流れました。
「えっ? 何の音?」
時計を見ると、3時3分でした。
「あ~あ、疲れた。今日もずっと座りっぱなしだものね。」
「さあ、やっと、動けるぞ」
お雛様たちは、段の上で伸びをしたり体操したり、そして、すーっと窓が開いて、飛んでいきました。
「お雛様が体操するなんて。それに、飛べるなんて。」
あやちゃんは、目を丸くして驚いていました。
お雛様たちは、空の旅を悠々と続けます。流れ星がすーっと流れ、きらきら輝いている他の星たちが挨拶しています。
すると、右大臣が左大臣に話しかけました。
「左大臣殿、昨日は、どうしたのですか? 私の席に、あなたが座っておられたので、私は仕方なくあなたの席に座ったのですよ。もし、家の人に知られたらどうするのですか?」
「やあ、すみません。あまりに疲れたので、あなたの席に座ってしまったのですよ。」
空の旅をしたお雛様は楽しそうな顔で戻ってきました。
不思議なことにまた、窓がすーっと開いて次々とお雛様が戻ってこられました。そして何もなかったように、雛段は満席になりました。
朝、あやちゃんはベッドの上で目が覚めました。
「お母さん、お雛様がね、飛んで行っちゃったんだよ。」
「何、寝ぼけているの、あやちゃんったら昨日はお雛様の前で寝ちゃったので、ベッドに連れてきたのよ。」
「??? 元に戻ってる。でも? よかったわ。これで安心して園に行けるわ。」
あやちゃんが、家のお雛様を見ると、今朝のお雛様はおかしくはありませんでした。
「お母さん、ほらほら、右大臣様がむかって左で、左大臣様が右でしょ。」