童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2018.10.2今夜のお話なあに

花咲爺

 正直なお爺さんとお婆さんが、仔犬のポチを我が子のようにかわいがって育てました。
 ある日、ポチは畑の土を掘りながら、
「ここ掘れワンワン」
と鳴きました。
 お爺さんが鍬で畑を掘ると、大判小判がいっぱい出てきました。喜んだ二人はご近所にも配りました。
 隣の欲張り爺さんと婆さんは、無理やりポチを連れ去り、大判小判を出せと棒を持って迫りました。ポチは、
「ここ掘れワンワン」
と鳴きました。
 欲張り爺さんが畑を掘ると、瓦や器の欠けたものがいっぱい出てきたのです。怒った欲張り爺さんは、ポチを殴り殺してしまいました。
 ポチを失ったお爺さんとお婆さんは、庭に墓を作って、そこに桜の木を植えました。
 何年か経って、木が大きくなったある日、夢にポチが現れて、
「臼を作ってほしい」
というのです。
 さっそく爺さんと婆さんは木を切って、臼を作り、その臼で餅をつくと、また宝物がいっぱい出てきたのです。
 それを知った隣の欲張り爺さんと婆さんは、その臼を借りて餅をつきましたが、出てくるのはゴミばかり。怒った二人は臼を割って燃やしてしまいました。
 正直なお爺さんとお婆さんは「せめて灰でも」と、灰をもらって帰りました。
 すると、急に風が吹いてきて、桜の枯れ木に降りそそぎ、不思議なことに花が咲き満開になりました。
 お爺さんは面白くて、残った灰を撒きながら、
「枯れ木に花を咲かせましょう」
というと、枯れ木はみるみる花が咲きました。
 そこを、たまたま通りがかったお殿様が喜んで、
「日本一の花咲爺じゃ」
といい、お爺さんにいっぱい褒美をくれました。
 それを見ていた隣の欲張り爺さんが灰を撒きました。すると、花が咲くどころか、お殿様の目に灰が入りました。
「無礼者め。あの爺を捕まえよ!」
 隣の欲張り爺さんは捕えられ、牢屋に入れられてしまいました。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。