童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2020.10.1今夜のお話なあに

挨拶がきらいな王さま 後編

~前編のあらすじ~
 王様は、朝起きてから、夜寝るまで、挨拶、挨拶のされどおし。
「いつもと同じ挨拶なんか、しなくていい」
王様は大臣たちに命令して、挨拶をしたものを牢屋に入れることにしました。
 牛乳配達のジャックは、パン屋のおじさんに「おはようございます」と言い、二人とも、つかまってしまいました。そして牢屋はいっぱいになりました。
 王様は大喜び。すると、楽しそうな歌声が牢屋の中からしました。王様は一緒に歌いたくなってきました。
♪地球が来るんと回ったら おはようって朝が来る♪
 いかんいかん。わしは挨拶が嫌いじゃった。挨拶の歌を、歌うなんて、とんでもない。
 王様は急いで、牢屋から逃げ出しました。そして町に出てみました。町にはだあれもいません。
「おおい、みんな、どうしたのじゃ」

※ここから後編の始まりはじまり。

 すると、小さな男の子が出てきて言いました。
「みんな黙ってるんだよ。牢屋へ入れられないようにね」
「ううむ」
 王様はうなりました。男の子はすぐに家の中へ入ってしまいました。
 王様はまた一人ぼっちです。
「挨拶をなくしたくらいでどうしたというのじゃ」
 王様はお城に帰ると、一番初めに牢屋に入れられたジャックに会いました。
「おまえは、なぜ挨拶が好きなのだ?」
「だって、挨拶をしないと気持ちが悪いでしょ」
 パン屋のおじさんも言いました。
「王様、挨拶は人々が仲良くなるためにはなくてはならないものだと思います」
「ううむ、その通りだ。挨拶がなくなったら人々はみんなばらばらになり、町もいいんとしてしまうことが分かった」
 王様は、すぐにみんなを牢屋から出しました。
 そして、この国は挨拶が飛びかって、ずっと笑い声のあふれる楽しい国になりました。

『挨拶がきらいな王さま』は、ずっと、子どもたちに読まれてきた、もり・けんの代表作。
「小学どうとく2」(日本文芸出版、光村図書の教科書)に載っています。
漢字は大人用にしています。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。