童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2018.7.1今夜のお話なあに

行基と龍の子

 昔、大阪の東の村では、雨が降らず田や畑の作物は枯れていきました。村の人たちはなんとか雨を降らせたいと、氏神様にご祈祷としましたが雲すらできません。
 そんな村に旅の僧、行基が通りかかりました。行基は、水が枯れた滝壺に座ると、お経を唱え雨乞いをしました。
 何日か経った日の朝、お経を唱えていると、雨雲が空を覆い、稲光が走ると、龍の子が降りてきました。
「私はお坊様に助けられた龍の子です。雨乞いの願いを聞きました。私の父の龍王は、雨が降らないよう龍たちに命令しています。でも私は行基様の恩に報い、雨を降らそうと思います。でも、そうすればきっと龍王の怒りを買い、私は殺されるでしょう」
と、いうと天に昇って行きました。
 すると、雲がもくもく動き大きくなり、雨が降り出しました。稲光が走り、雷が鳴りました。天では、龍の子が暴れまわったあげく苦しみ、体を壊されてあちこちに落ちました。
 雨は、村を潤し、村の人は大喜び。村人は行基の法力に改めて驚き、感謝をしました。
 村人は、恩ある龍の子に感謝し、龍の子を探しに出かけました。
 龍の子の尾が竹やぶで見つかりました。村人は尾を収めてお堂を建てました。そして、頭、腹も見つかり、それぞれお堂を建て、お祀りしたのです。
 尾が落ちた場所に建てられた龍尾寺、腹の所には龍腹寺、頭の所が龍頭寺となりました。
 行基が雨乞いをした滝は、龍が現われたので、権現の滝とし、川を権現川と名付け、いつまでもそのご恩を語り伝えています。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。