行基と龍の子
昔、大阪の東の村では、雨が降らず田や畑の作物は枯れていきました。村の人たちはなんとか雨を降らせたいと、氏神様にご祈祷としましたが雲すらできません。
そんな村に旅の僧、行基が通りかかりました。行基は、水が枯れた滝壺に座ると、お経を唱え雨乞いをしました。
何日か経った日の朝、お経を唱えていると、雨雲が空を覆い、稲光が走ると、龍の子が降りてきました。
「私はお坊様に助けられた龍の子です。雨乞いの願いを聞きました。私の父の龍王は、雨が降らないよう龍たちに命令しています。でも私は行基様の恩に報い、雨を降らそうと思います。でも、そうすればきっと龍王の怒りを買い、私は殺されるでしょう」
と、いうと天に昇って行きました。
すると、雲がもくもく動き大きくなり、雨が降り出しました。稲光が走り、雷が鳴りました。天では、龍の子が暴れまわったあげく苦しみ、体を壊されてあちこちに落ちました。
雨は、村を潤し、村の人は大喜び。村人は行基の法力に改めて驚き、感謝をしました。
村人は、恩ある龍の子に感謝し、龍の子を探しに出かけました。
龍の子の尾が竹やぶで見つかりました。村人は尾を収めてお堂を建てました。そして、頭、腹も見つかり、それぞれお堂を建て、お祀りしたのです。
尾が落ちた場所に建てられた龍尾寺、腹の所には龍腹寺、頭の所が龍頭寺となりました。
行基が雨乞いをした滝は、龍が現われたので、権現の滝とし、川を権現川と名付け、いつまでもそのご恩を語り伝えています。