登龍門
滝は、山の水を集めて、滝からゴーゴーと音を立てて落とします。水は川を下り、最後は海に流れるのです。
ある日のこと、川の魚たちを集めて天の神様がいいました。
「みんなよく聞くんだ。この川を下って海のほうへ行くのはたやすいことだが、この川をさかのぼって上流のほうに行くと、ゴーゴー音を立てて天から水を落としている滝にやってくるだろう。その滝を、お前たちの中で一番先にのぼりきったものに、魚の王様になってもらおうと思う」
川の魚は、みな我こそはと滝のほうに泳ぎ始めました。でも、どの魚も、自分が王様になりたくて、次々にのぼろうとしますが、途中で落ちてしまいのぼることができません。
そして、あまりにたくさんの魚たちが、川を上り始めたので、川は魚でいっぱいになりました。おまけに、
「じゃまだ。どけよ」
と、けんかが始まりました。
そのときです。
一匹の鯉がスーッと抜きでて滝をのぼり始めました。鯉は、小さな声で祈っています。
「国が豊かでありますように。みんなが仲良く暮らせますように」
水にたたかれ、うろこがはがれても、その鯉は負けません。力をふりしぼって、ぐんぐん、ぐんぐんのぼりました。
そして、鯉はとうとう、のぼりきると、さらに天までかけあがりました。そして、雷鳴がとどろいたかと思うと、ついにその姿は龍になりました。
鯉は、自分のことよりも、みんなのことを、そして国のことを思ったので、龍となったのです。
そして、魚の王様になりました。その姿は金色のうろこが、ぴかぴか光り輝く、それはりっぱな王様の姿でした。