童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2019.1.1今夜のお話なあに

初詣・お正月飾り

 昔々、親孝行の一人息子がいました。
 息子の家は貧しいので、昼の間は近くの村に出稼ぎにいく毎日でした。夜には自分の食べ物を持って帰り、父母に食べてもらうほどの孝行息子でした。
 息子がある大晦日の夜更けに、棺を背負って歩いてくるお爺さんを見かけました。わけを聞くと、
「たった一人の孫が死んでしまい、その息子を弔いに行くのだよ。わしは貧乏人だから手伝ってくれる人もありゃあしない」
と言いました。
 孝行息子は、お爺さんの代わりに棺を担いでやることにしました。
 しばらく歩いていると、お爺さんの姿が急に消えてしまいました。息子は、棺を持ったまま、どうしたらいいのかと途方に暮れてしまいました。
 息子は仕方なく、棺を担いだまま自分の家に帰ることにしました。
 家で待っていた父母に今までのことを話し、棺の蓋を開けて見ると、そこには大判、小判がいっぱい詰まっていたのです。これはきっと、神様からの贈り物だと思いました。
 さっそく、隣近所の皆さんを呼んでお祝いをし、お礼参りに神様の居られる神社に初詣にいったそうです。
 孝行息子と父母は大金持ちになり、それからは幸せに暮らしました。
 正月の元旦に、初詣に出かける前、橙黄赤白の色紙で仏壇やカマドを飾るのは、その孝行息子のお話から始まったと言われています。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。