童謡伝道マガジン「ふんふん」H・U・N企画

今夜のお話なあに

2018.1.1今夜のお話なあに

桃太郎

 昔々、ある山あいの村にお爺さんとお婆さんが住んでいました。
 いつものように、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に出かけました。
 お婆さんが洗濯をしていると、川上からドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。
「なんと大きな桃だこと! お爺さんと食べましょう」
 お婆さんはそれを家に持って帰りました。そして、桃を切ろうとすると、なんと、中から男の赤ちゃんが出てきました。
 子どもがいなかった二人は大喜び、桃から生まれた男の子を、桃太郎と名づけました。
 桃太郎が大きくなったある日のこと、お爺さんとお婆さんに話しました。
「鬼ヶ島の悪い鬼を退治しに行きます」
 お婆さんは、きび団子を作って、桃太郎に持たせました。
 桃太郎が歩いていくと、犬がやってきました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼を退治しに、鬼ヶ島へ行くんだ」
「それなら私も一緒に連れて行ってください」
「よし、ついてくるがいい」
 桃太郎は、お腰に付けたきび団子を1つ犬にやりました。犬はきび団子をもらい、桃太郎のお伴になりました。
 桃太郎が歩いていくと、今度は猿に出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼を退治しに、鬼ヶ島へ行くんだ」
「それなら私も一緒に連れて行ってください」
「よし、ついてくるがいい」
 桃太郎は、お腰に付けたきび団子を1つ猿にやりました。猿もきび団子をもらい、桃太郎のお伴になりました。
 また桃太郎が歩いていくと、今度は雉に出会いました。
「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
「鬼を退治しに、鬼ヶ島へ行くんだ」
「それなら私も一緒に連れて行ってください」
「よし、ついてくるがいい」
 桃太郎は、お腰に付けたきび団子を1つ雉にやりました。雉もきび団子をもらい、桃太郎のお伴になりました。
 こうして、犬、猿、雉を従えた桃太郎は、悪い鬼たちのいる鬼ヶ島へやってきました。
 鬼ヶ島では、鬼たちが、近くの村から盗んだ宝物やご馳走を食べて、酒盛りをしているところでした。
「みんな、一斉に行くぞ。それ、かかれ!」
 犬は鬼のお尻にかみつき、猿は鬼の背中を引っ掻き、雉はくちばしで鬼の目をつつきました。
 桃太郎も、刀をふり回して大暴れ。
 とうとう、鬼の親分が、
「まいりました。もう悪いことはしません。助けてください」
と、あやまりました。
 桃太郎たちは、鬼から取り上げた宝物を荷馬車に積んで、村に帰りました。村の人たちは大喜び。
 お爺さんとお婆さんは、
「桃太郎、お前は日本一の桃太郎だ!」
と大喜びです。村のみんなは、宝物のおかげで幸せに暮らしました。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。