一休とんち話より お正月はめでたくない
初詣のお客さんでにぎわう町の通りを、汚い身なりのお坊さんが長い竹ざおを一本をかついで歩いてきました。
その竹ざおの先のようには、白い骸骨がぶら下がっていました。通り過ぎる人々は、薄気味悪がって、お坊さんを避けて、あやしい目で見ていきました。
お坊さんは、とんちで有名な一休さんでした。
一休さんは骸骨をかついで、町中をどんどん歩いていき、この町で一番のお金持ちの、銭屋徳兵衛さんの家に来ると、
「新年のごあいさつにまいりました!」
と、言いました。
家の中から徳兵衛さんが出て見ると、汚い身なりの一休さんが骸骨をつけた竹ざおを持って、立っていました。
徳兵衛さんは腰をぬかして、震えながら言いました。
「一休さん、正月に骸骨を持ってくるとは、縁起が悪いじゃないですか!」
一休さんは言いました。
「徳兵衛さん、正月が来ると、みんな一つずつ年をとりますよ。ということは、正月が来るたびに、それだけ死が近づいているということですね。
だから、正月といって、浮かれてもいられない。だれでも必ず、いつかは死に、こんな骸骨になるのですからね。
生きているうちに、いいことをいっぱいしてください。そうすれば、あなたは極楽へ行けると思います。
あなたは、大金持ちです。あまっているお金は困っている人たちのためにお使いなさい」
大金持ちの徳兵衛さんをはじめ、町中の大勢のお金持ちが一休さんの教えを守ったと伝えられています。
(一休宗純、1394.2.1-1481.12.12)