大阪の蛙と京の蛙
大阪で生まれて、どこにも行ったことが無い大阪の蛙が旅に出ることにしました。
「わしは大阪しか知らんのや。噂では京は、清水はんや、御所があって、ええとこやいうから行きたなったわ」
大阪の蛙は京に向かって歩き始めました。
同じ頃、京で生まれてどこにも行ったことが無い京の蛙も旅に出ることにしました。
「うちは京の町しか知らんのどす。噂では大阪は天満の天神さんや四天王寺があって、それに大阪城もあって、ええとこらしおます」
京の蛙も大阪に向かって歩き始めました。
目的地の大阪と京の町、蛙の足ではなかなか遠く、一生懸命歩いても着きません。おまけに大阪と京の間には天王山という山があり、そこを越さないと行けません。
大阪の蛙はやっとのことで天王山までやってきました。
「やっと天王山のてっぺんや。この山越したら京の町やわ」
京の蛙もまた、やっとのことで天王山までやってきました。
「やっと天王山のてっぺんどすな。この山越したら大阪どす」
そして二匹の蛙がそこでばったり出会いました。
「あんさん、どこへ行きはるんでっか?」
「ちょっと大阪まで行ってみよ思て」
「そうでっか、わしは京へ行こ思てまんのや」
二匹の蛙は、向かい合わせで立つと、大阪の蛙は京都の方を向いて、京の蛙は大阪の方を向いて、自分が行く方向へ向かいました。
「背伸びしたら、よお見えまっせ」
そこで、大阪の蛙と京の蛙が手をつないでぐーんと背伸びをして反り返りました。
「なんや、京の町は、大阪と同じやんか」
「大阪の町も、京の町とそっくりどすな」
「ほんならわざわざ行くとこはない」
「そうどすな。峠を降りて、町に行って同じ景色見てまた、登ってこんならんから、わしはやめときますわ」
「私も、しんどいから、もう帰ります」
二匹の蛙は、もと来た道を引き返していったそうです。
二匹の蛙が見た町は、それぞれ自分の町やったんです。
そうです。蛙の目は頭の上にあるのです。背伸びしてそっくり返ると、後ろが見えたのですからね。
はい、ぶっちゃけ、おしまい!