今夜のお話なあに

2017.11.4今夜のお話なあに

かちかち山

 昔、ある山の里に、お爺さんとお婆さんが暮らしていました。山の中のことですから、そんなに広い土地はありません。あちこちに小さな畑を作って世話をしていました。小さな畑には、芋や大根、菜っ葉や豆などを作って育てていました。
 ある朝のこと、お爺さんが畑に水やりをしようと思って表に出ると、畑や無茶苦茶に荒らされていたのです。せっかくまいた種をほじくりだしたり、芋を掘りだしてありました。
「誰がこんなひどいことをしたんじゃ」
お婆さんに話すと、
「それはきっと狸の仕業でしょう。よくこの辺りをちょろちょろと走り去るのを見たことがあります」
 お爺さんは罠を仕掛けて、狸を捕まえました。
「お婆さんや、この狸は、狸汁にしておくれ」
というと、また他の畑に出かけていきました。
 捕まった狸は、お婆さんに頼みました。
「もう悪さはしないからこの縄を解いてください。何でもお手伝いします」
 お婆さんは、狸汁にするのはかわいそうじゃと、縄を解いてやりました。すると、狸は杵でお婆さんを殴って逃げてしまったのです。
 お婆さんは、頭から血を流して倒れ、そのまま息を引き取りました。帰ってきたお爺さんは、お婆さんを助け起こしましたが、もう息をしていませんでした。
「なんということだ。あの狸は許すことはできん」
 お爺さんが泣いていると、仲のいい兎がやってきました。
 兎は話を聞いて、 
「よし、俺が仇をとってやる」
と狸のところへ出かけていきました。
「やあ、狸さん、柴刈りに行くから一緒に行かんか? 柴は高く売れてお金が儲かるぞ」
 狸は、兎と一緒に柴を刈りに行きました。帰り道で、兎は狸の後ろから火打石を「かちかち」と鳴らしました。
「兎さん、かちかちと音がするが、何だろう?」
「ここはかちかち山だからかちかち鳴るんだよ」
 しばらく歩いていくと、背中の方でぼうぼうと音がします。
「兎さん、ぼうぼうと音がするが、何だろう?」
「それは、ぼうぼう鳥が鳴いているから、ぼうぼうと音がするんですよ」
 そうしているうちに、背中の芝に火がついて燃え上がりました。
「あちちちち、あちちちち」
 狸の背中は大やけどを負いました。
 少しして、兎は狸のお見舞いに行きました。
「狸さん、やけどによく効く薬を持ってきてあげたよ」
 そういって、とうがらし味噌を渡しました。兎が帰ると狸はやけどのところにそれを塗りました。
「いたたたたた」
 狸は転がり痛がりました。
 狸のやけどが治ると、兎は木の船と、一回り大きな泥の船を用意して狸を釣りに誘いました。
「狸さん、魚がたくさん積めるから大きいほうの船に乗ったほうがいいよ」
 狸が泥の船を選んだので、兎は木の船で池の真ん中までやってくると、泥の船は周りから溶けていき、沈み始めたのです。
「兎さん助けてくれ!」
 兎は、艪で狸を殴り、こういいました。
「狸さん、あんたがお婆さんにしたようにしてあげましょう」
 狸の乗った船は沈み、狸は溺れてしまいました。兎はお婆さんの仇を討ちました。

文/もり・けん
1951年大阪市生まれ。
長年勤めた幼児教育出版社を
43歳で退社し、モンゴルに渡る。
自然に添うように生きる遊牧の暮らしを学び帰国。以後モンゴルの正しい理解と亡くしてしまった日本の心を取り戻せと訴え続ける。

日本の童謡の普及のため、作詞(新しい童謡の創作)、演奏(昔からある良い童謡の伝承)の両面で展開、全国各地を講演、ハーモニカによるコンサート活動は海外にも及びモンゴルを始めロシア、中国、北欧のフィンランドやスウェーデンなどの子供たちとも交流している。

文部科学省の財団法人すぎのこ文化振興財団の環境ミュージカル「緑の星」をはじめビクター「ふしぎの国のアリス」などを発表、絵本、童話、童謡など子供のための創作活動をしている。

現在、日本音楽著作権協会会員、日本童謡協会会員、詩人、ミュージカル作家、作詞家、ハーモニカ奏者。梅花女子大学、朝日カルチャーセンター、読売文化センター、ヤマハ音楽教室などの講師を勤める。