音楽の力
今年の「音楽の秋」は、ピアノリサイタルから。といっても、もちろん私が演奏するわけではなく、観客の一人として楽しませていただきました。
以前にお仕事でご一緒させていただいた田中修二先生の、デビュー40周年。
兵庫県立芸術文化センターの大ホールを埋め尽くす人、人、人。これだけの人を集める田中先生って、かなりすごい・・・。
先生の演奏をお聴きするのは本当に久しぶりでしたが、想像以上のものでした。もちろん、昔もすごいと思いましたが、それをさらに上回るものでした。
演奏が終わるたび、身体が震え、涙があふれそうになる感動は、自分の人生の中でもめったにないことです。オーケストラと見事にハーモニーを奏でながら、堂々と演奏される姿に心を打たれ、気がつけば、ピアノの音だけを聴きとろうと必死に耳を澄ませていました。
実は私、ピアノがそんなに好きではありませんでした。
幼い頃から続けてきたピアノ。高校生の時には、そこそこ弾けるようになり、合唱の伴奏を務めた経験もあります。それでも思い起こすと、「楽しかった」と思ったことはほとんどありませんでした。
今から考えると、なんともったいない! 今の私では到底弾けない名曲の数々を、見事に弾きこなしながら(話はちょっと盛っています…笑)、いつも苦痛で自己嫌悪ばかり。自分が演奏していて楽しくないのに、人が聴いて楽しいはずはなく、なぜそれがわからなかったのかと、今更ながらもどかしい。
あの時の自分に会えるなら、「下手でもいいから、もっと楽しんで!」と声をかけてあげたいと、切に思います。
フタをしていたピアノへの屈折した思いも、田中先生の演奏を聴くうちに、払しょくされていました。こんなに素晴らしい音を奏でる楽器なのだと、ピアノをあらためて好きになりました。音楽の力、演奏者の力が、人の心も変えていく。音楽はいいなあ。
この勢いを借りて、下手でも何か楽器を始めてみたい。できれば打楽器系で。わが家の子どもたちの使わなくなった木琴でも、叩いてみることにしましょうか。まずは♪とんぼの眼鏡♪から。