クリスマスには贈り物
昭和の時代、田舎町で育った女の子には、クリスマスは特別なものでした。
日頃はおねだりすることなどできない両親に、欲しいものを言えるのはお誕生日だけ。ただ残念なことに、自分の欲しいものを言っても、父が気に入らなければ買ってはもらえない。でも、クリスマスは違います。サンタさんにお願いするのですから、自由に欲しいものを頼むことができました。
サンタさんは、時に違うものを贈ってくる時がありましたが、おおむね望みを叶えてくれます。年に1度しかない貴重なチャンス。さあ、何をお願いしようか…。
12月に入ると、もう頭の中はそのことばかり。クリスマスが近づくと、お願いした物がちゃんと届くか気になり、何度も心の中でお祈りして、プレゼントの届くのを待ちました。
写真の中には、本当に嬉しそうに人形を抱えた女の子。欲しくて欲しくてたまらなかったお人形。何度も遊んだ大切な友(人形)は、古びても大人になっても捨てられず、実家の押し入れで静かに眠っていました。
女の子はやがて大人になり、母になり…お人形は、長い長い眠りの後、女の子の娘の遊び相手として復活しました。楽しそうに遊ぶ娘の姿に自分を重ねるうち、決して裕福では無かったけれど、守られ育まれ、あたたかな思いで過ごしていた子ども時代を思い起こすことができました。
物は物でしかないかもしれません。でも、そこには思い出や優しさや嬉しさを一緒に込めることもできるのです。
クリスマスには贈り物。
サンタさんから、たくさんの笑顔の贈り物をもらった大人たち。
次はあなたの番です。